Kazuhide Oka
HP

サークルについて

オリジナルの探索・ADVを制作されています。

 

作品

ナツノカナタ

 

概要

ジャンル

オリジナル/探索・ADV

発表年月

2022/8

価格

フリーソフト

年齢制限

なし

特徴

ポストアポカリプス、夏、SF

ver 1.1.7時点で選択肢あり(単語入力)、十時間半ほどで読み終わりました。
バックログ、表示速度変更、オートモードなどがあり、セーブはオートセーブです。

 

あらすじ

故郷の東京を離れ、北を目指して旅を続ける少女、ナツノ。
一人旅だった。
高校の同級生とは、東京を出るときに離れ離れになった。
両親とはどこかの駅ではぐれた。
電車が動かなくなってからは、一人で歩いて旅を続けた。
真っ青な空に蝉の声が響く夏は、始まったばかりだった。

旅先で町に立ち寄っても、誰の姿も見つけられない。
世界は、半年前に終わりを迎えていた。
未曾有のパンデミックは、ほんのわずかな時間で、社会を崩壊させた。
感染すると、人は理性を失い、物言わぬ怪物となって人を襲う。
原因となるウイルスも細菌も、ついに明らかにならなかった。
わかっていることは何もない。
それでも目の前にあるものはただただ現実で、
町を歩いても誰にも出会わず、たった一人、旅を続けるしかない。

あなたが偶然話をしたのは、そんな世界に住む少女だった。
亡くなった祖母の遺品整理で古いコンピュータを見つけたのが、すべてのはじまり。
祖母の思い出を期待して、あなたはコンピュータのデータを開いた。
けれどコンピュータから聞こえたのは、知らない少女の声だった。
ナツノと名乗る少女と、どういうわけか通話が繋がっていた。

もちろん、あなたの住む世界ではパンデミックなんて起きていない。
高校生は誰もいない町なんかを放浪したりせず、夏休みを満喫している。
彼女はいったいどこにいるのか。
どうして通話が繋がるのか。
わからないことだらけだったけれど、
ナツノはただ「話し相手になってよ」と、そう言った。

終わってしまった世界を生きる、別の少女たちとの出会いを重ねながら、
あなたは少しずつ、真実に迫っていく──

(公式サイトより)

 

この作品について

人が怪物となって人を襲ったり、体が様々なものに変わって息絶えたりするパンデミックが起こり
社会活動がほぼ行われなくなってしまった世界で生きる少女、ナツノと通話が繋がり、
彼女のあてのない旅に話し相手として同行することになります。
しかし、「あなた」の世界ではパンデミックは起こっておらず、
その違いを探ったり、様々な人と出会ったり、でも通話しかできないため直接手助けはできない状況にもどかしく感じたりしていきます。
廃墟探索パートとストーリーパートあり。どちらも単語を入力してナツノに話しかけて話を進める場面があります。
探索パートは設定でスキップ可能。

システムは場面切り替えでバックログが消去されてしまうことがやや不便でしたが、
ナツノに語り掛けることの多くはテキストをクリックしたり、テキストボックスの候補から選択できたりすることがありがたかったです。
音楽は大部分の人がいなくなってしまった寂しさと、
だからこそゆったり流れる時間の穏やかさ、やさしさが感じられました。EDにムービーと歌あり。
絵は、立ち絵があるのが全員女の子で華がありましたし、表情差分は少なめながら感情の機微が伝わってきました。
人のいない廃墟の背景も世界観を補強しています。

探索パートは探索する場所を選んで調べるものを選んでアイテム入手、時折怪物と戦う、というもので、
一か所だけの探索であれば食料も不要なうえ、ナツノが素手であっても結構勝てる(強い敵は事前に警告あり)ため難易度は低めで単調ではありますが、
私はそのゆるさがなんだか心地よくて、ストーリーパートの息抜きとしていいアクセントになっていると思えました。
また、最初はナツノが別の部屋に移動してから元の部屋を探すよう指示してここにはないと言われたりしてチグハグになりましたが、
何回も探索していくと息が合ってきて適切なタイミングで声をかけるようになれて、それがなんだか嬉しかったです。
念願のボストンバッグ(持ち運べる道具大幅増)入手直後に調子に乗って強敵と戦えと強制して負けてロストしたのは痛恨のミスでしたが!!

ストーリーは序盤、あてもなく旅して廃墟から物資を入手して、時折出会う人と話す、というものでしたが、
違う世界の「あなた」とナツノが何故通信できるのかや、二つの世界の関係、パンデミックの理由などを解き明かそうと行動するようになっていきます。
イツカと出会ってパンデミック以外に二つの世界の違い(さらには我々プレイヤーの世界との違い)が明らかになる場面や、
さもありえそうな仮説が否定される場面など、それまでの思い込みが否定される箇所には驚かされましたし、
最終シナリオまで読んでも解決しないことが多くもやもやする部分もありましたが、同時にそんな曖昧な世界と、そこに生き続けるナツノの日々がより大切に感じられました。

さらに魅力的なのはナツノと、出会う人々の心情描写。
日常が無くなってしまったからこそ彼女たちに突き付けられた、生きることや、何をするか、何をしなければならないか、
あるいは一時的にナツノと行動を共にしながらも何故別行動をすることになるのか。
そうした心の柔らかい所が訥々と語られ(あるいは語られずに飲み込まれ)ていて、明快ではないあいまいさが愛おしかったです。

さらにさらに夏の廃墟を車で移動する女子高生とか、もうそれだけで優勝! なのですが、
立ち絵、背景、音楽、情景描写なども素晴らしく、一層心惹かれました。

世界の真相を求める過程や、ナツノたちの答えが興味深く、
同時に、ナツノたちと旅する時間が掛け替えなく大切に感じられる、とても素敵な作品でした。

ちなみに最後まで読み終えた後も、探索をすることができます。
ver 1.1.8ではハロウィンイベントが追加されました(作中は夏ですがそれはそれ)

私は今も、彼女と会っています。

 

 

 

 

トップへ戻る      一つ前に戻る